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2025年度 第30回 留学生教育学会 年次大会 開催報告

第30回 留学生教育学会 年次大会(2025)
──地域に暮し、地域で学び、地域で働く──

2025年9月5日(金)・6日(土)、茨城大学 水戸キャンパスにて第30回 留学生教育学会 年次大会が開催されました。
記念すべき30回目の節目となる本大会には、全国から157人(対面137人・オンライン20人)が参加し、活発な議論と交流が繰り広げられました。

▼ 大会テーマ
本年度のテーマは「地域に暮し、地域で学び、地域で働く」
この言葉には、留学生が地域社会の一員として生活し、学び、そして将来に亘って地域に貢献してゆく姿への願いが込められています。


■ 1日目(9月5日): 基調講演・シンポジウム・ワークショップ

開会式では、末松和子会長(留学生教育学会)および太田寛行学長(茨城大学)による挨拶の後、優秀論文賞および奨励賞の表彰が行われました。

挨拶1 挨拶2
末松和子 会長(留学生教育学会) 太田寛行 学長(茨城大学)
優秀論文賞 奨励賞
坂井伸彰 氏(長浜バイオ大学)
「ジョブローテーション制度下の企業に勤務する元留学生外国人社員のキャリア形成のプロセス」(『留学生教育』第29号)
瀬尾匡輝 氏(茨城大学)

佐藤邦明氏(文部科学省高等教育局)
聞き手:末松和子会長

続いて、佐藤邦明氏(文部科学省高等教育局)による基調講演「留学生交流の現状と今後の見通し」が行われ、政策的視点からの課題と展望が示されました。
参加者からは「学会の方向性と政策の整合性を再認識できた」との声も寄せられ、講演の意義深さがうかがえました。

午後には、シンポジウム「日本留学の意義──地域に暮し、地域で学び、地域で働くために」が開催されました。
登壇者に岸田由美准教授(金沢大学)黄磊氏(株式会社LEIDEAS代表)を迎え、地域との関係性を重視した留学生支援の実践が紹介されました。
黄氏からは「留学生みらい会議」等の先進的な取り組みも共有され、参加者の関心を集めました。
アンケートでは「留学生教育やキャリア支援の現状と課題を多角的に考える契機になった」「多様な分野の方との情報交換が有益だった」等の声が寄せられました。

シンポジウム
岸田由美准教授(金沢大学) 黄磊氏(株式会社LEIDEAS代表)

また、小磯重隆氏(茨城大学キャリアセンター)によるワークショップ「何か変だよ、日本の求人票・履歴書」では、留学生が直面する就職活動の課題について、実例を交えた議論が展開されました。
「臨場感があり、大いに賛同した」との感想もあり、実務的な気づきの場として高く評価されました。

夜には懇親会が開催され、参加者同士の交流が一層深まりました。
本懇親会は、学会の伝統として、参加者が各々の “タレント” を持ち寄って披露する場としても機能しており、歌やパフォーマンス等が披露され、和やかな雰囲気の中で笑顔が広がりました。
また、水戸市公式マスコットキャラクター「みとちゃん」も来場し、参加者との記念撮影を行いました。
こうした場を通じて、分野や所属を越えたネットワークが自然に形成され、今後の研究や実践の連携に繋がる貴重な機会となりました。

懇親会
「乾杯!」 水戸市公式マスコットキャラクター「みとちゃん」と

■ 2日目(9月6日): 企画ワークショップ・実践報告・研究発表・交流企画

2日目は、教育現場や地域との連携をテーマに、以下の企画ワークショップが開催されました。

  • 茨城大学 × 勝田中等教育学校: 国際共修の取り組み
  • 東北大学・近畿大学: 海外学生受入れ短期プログラムの開発
  • 東北大学: 地域社会との「協働」を創る国際共修
  • 日立さくら日本語学校 × 茨城大学: 地域連携型日本語教育の実践

参加者からは「課題の成果を共有でき、自分も参画した満足感があった」との声が寄せられ、実践的な学びと交流の場として高く評価されました。

昼食時にはネットワーキングイベントが開催され、参加者同士が自由に意見交換を行いました。
「短時間で多くの方と話ができ、示唆を得られた」「知人を増やせた」等の感想もあり、今後の連携や共同研究の可能性を広げる有意義な時間となりました。

また、会員による研究発表36本(口頭27本、ポスター9本)が行われ、教育実践・政策分析・学習者支援等、多岐に亘るテーマが取り上げられました。
活発な質疑応答が交わされ、「多様な分野の方々と意見交換でき、研究だけでなく実務にも役立つ情報が得られた」との声もあり、学会ならではの知的交流の場となりました。

研究発表
口頭発表 ポスター発表

参加者アンケートから見える大会の評価

本大会では、参加者の声を今後の学会運営に活かすべく、終了後にアンケートを実施しました。
多様な立場からの率直な意見が寄せられ、全体として高い満足度が示されると共に、今後の改善に向けた貴重な示唆も得られました。
大会の満足度は平均4.31点(5点満点)と高く、多くの参加者から「運営がスムーズで、交流の機会が豊富だった」「発表・ワークショップのバランスが良く、実務にも役立つ学びが得られた」等の肯定的な声が寄せられました。

高く評価された点
  • 参加型ワークショップやネットワーキングの充実
  • 多様な分野の参加者との意見交換の機会
  • 地域との連携を重視した実践報告やシンポジウムの内容
  • 学生スタッフや運営チームの丁寧な対応
  • 懇親会やポスターセッションでの自由な交流の雰囲気
参加者の声(一部抜粋)
  • 「初めて参加したが、温かく迎えられた。とても雰囲気の良い学会だった」
  • 「知りたい情報を的確に得られ、業務に直結する示唆を多く得られた」
  • 「ワークショップやネットワーキングの機会が大変有意義だった」
  • 「発表とワークショップの時間が重ならず、どちらにも参加できたのが良かった」

おわりに

第30回という節目を迎えた本大会は、全国から多様な立場の参加者が集い、留学生教育の現在と未来について多角的に議論を深める貴重な機会となりました。
地域との連携、キャリア支援、教育実践の共有等、現場に根差した取組が数多く紹介され、参加者同士の繋がりも一層強まりました。
ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

尚、次回(第31回)年次大会は、信州大学での開催が予定されています。
引き続き、留学生教育に関わる多様な実践と知見が交差する場として、より一層の発展を目指してまいります。
今後とも、留学生教育学会へのご支援・ご参加をよろしくお願い申し上げます。