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若手ネットワーク委員会「日本語教育の近未来を考える研究会」開催報告

留学生教育学会 若手ネットワーク委員会は2025年7月3日(木)、オンラインイベント「日本語教育の近未来を考える研究会」を開催しました。
若手を中心に多くの会員・非会員の皆様にご参加いただきました。
本イベントは三部構成で行われ、日本語教育の分野で活躍する本学会の理事・理事補佐および関係者の面々が登壇しました。

第1部「日本語教育機関の展望」では、その前半に、学校法人新井学園 赤門会日本語学校 常務理事・新井永鎮氏から、日本語教育機関の現状や日本語教師の実態について多角的に検証したご講演をいただきました。
現在、日本の高等教育機関には約23万人、日本語教育機関には約10.7万人の留学生が在籍しており、特に近年はネパール・ミャンマー・スリランカ等からの留学生が急増中で、日本の「安心安全」というブランドが魅力になっているとのことです。
日本語学校卒業生の実績として、約78%が日本の高等教育機関に進学しており、その内訳は大学院が20%、大学・短大が30%、専門学校が28%との報告がありました。
全国に約600校ある日本語学校は、これまで法務省の告示校でしたが、2024年から文部科学省の認定日本語教育機関への移行期間にあり、2029年3月までに認定を受けられない学校は留学ビザを持つ学生を受け入れられなくなるという制度変更の説明がありました。

後半には、現場からの声として、大学で日本語教育を専攻して現在は新宿平和日本語学校で教える新人日本語教師・中川先生へのインタビューがありました。
中川先生は、現場経験を積むために日本語学校に就職し、学生から頼られることにやりがいを感じる一方で、文化の違いや学生レベルに合せた授業の難しさを課題として挙げていました。
問題解決には先輩教師への相談が有効とのことでした。
また、日本語教育を専攻した学生のうち、実際に日本語教師になる人は少数であることも言及されました。

第二部 パネルディスカッションには、大学と日本語学校から4人のパネリスト(工藤昭子 国際武道大学特任教授、近藤佐知彦 大阪大学教授、佐藤恭子 岡山外語日本語学院副教務主任、永井早希子 東京ギャラクシー日本語学校 理事長)と司会(中野遼子 近畿大学講師)が登壇しました。
言語運用能力の育成、カリキュラムにおける評価方法、スマートフォンを活用した授業デザイン、そして注意から対話への移行について議論されました。
日本語学校側からは、進学試験対策と実際の言語運用能力育成のバランスの難しさが指摘され、大学側には入試方法の見直しが提案されました。
評価については、日本語学校では自己評価・他者評価・教師評価の三本柱を取り入れる試みが紹介されました。
スマートフォン活用については、日本語学校では制限付きながら学習ツールとして活用する事例が共有され、他方で語彙力低下などの弊害も指摘されました。
また、学習者の自立を促すためには、ロールモデルの提示や理由を共に考える対話的アプローチが効果的との意見が出されました。
最後に、大学と日本語学校の連携強化の必要性が確認され、特に入試制度の複雑さや非漢字圏学生への配慮について今後の課題として挙げられました。

第三部では、「大学の日本語教育」「日本語学校」「日本語教育研究」という3つのブレイクアウトルームに分かれ、登壇者と参加者による活発な意見・情報交換とネットワーキングが行われました。

留学生教育学会 若手ネットワーク委員会は、今後も若手研究者や大学院生に資する企画を予定しています。
多くの皆様には引き続き、学会や研究大会、企画イベントに参加していただきたいと考えています。